2017年5月25日木曜日

皮膚科に行ってきました

今日は皮膚科に行ってきました。
ここ1、2週間で手の汗、足の汗が両方ともずいぶんと戻ってきて、ひょっとしてこれから足の汗が深刻になったらやだなぁとの思いから、塩化アルミニウム溶液をもらいに行ってきました。

で、診察時にもう一つ気になることがあって、それも相談したんです。
2,3日前に出てきたんですが、右手薬指の根元に赤いぶつぶつができたんです。
痛みやかゆみはまったくないんですが、周辺の皮膚は固くなってます。

先生の説明によると、これは汗疱(かんぽう)といって汗腺の炎症ということでした。
ちょっと調べたのですが、手の汗がかきやすい人や自律神経失調症の人に良く見られるみたいです。でも私はまだ手の汗はそこまで十分には戻っていないです。ということは自律神経系の影響ということになります。

今私は手のひらに向けて神経が流れているのを1日中感じています。その流れは今までにない強さ、激しさなんですが、それがこの炎症を作ったのかなと思いました。つまり私にとってこれは回復の証しということです。この症状は初めてのことなので、今の神経の流れる異常な感触が治まればこれも治まるんじゃないかなと思ってて、あまり心配はしていないです。

ちなみに神経の流れる感触なんですが、引っかかりのないスムーズな流れは痛みとか不快感とかはなくてむしろ変な気持ち良さを感じます。いわゆる「快感」という感触も交感神経の伝達が作り出すのかなと思っています。

ということで、20%の塩化アルミニウム水溶液と軟膏をもらってきました。

塩化アルミニウムは、その粒子が皮膚の汗腺の穴に詰まって栓をするイメージで効果を出します。
風呂上りや寝る前や起きた直後は足の汗は出ないでさらさらなので、このタイミングで塗りたくってやろうと思ってます。
私の場合、足汗が気になるのは夏じゃなくて冬だったんですが、これは気圧のせいだと考えています。雨が降るときにも足の汗はさっとひきます。つまり、私は気圧が高いときに汗をかくみたいなんです。

今後どこまで汗が戻るか、塩化アルミニウムがばっちり効果を発揮してくれるか、それはこれから分かってくると思います。
そういった状況もまとめて書こうかなと思います。

2017年5月23日火曜日

香港で行われたビデオ・アシストでのリバーサル手術

韓国で行われたリバーサル手術のケースレポートオーストラリアで行われたリバーサル手術のケースレポートを載せましたが、その他にも香港で行われたビデオ・アシストでのリバーサル手術のケースレポートがあります。
この資料の利用の自由が確認できたので、その訳を一部載せたいと思います。
なお、訳に間違いがあったらごめんなさい。

サイト: InTechOpen
記事タイトル: Needlescopic video-assisted thoracic surgery for reversal of thoracic sympathectomy

目次
要約(Abstract)
紹介(INTRODUCTION)
ケースレポート(CASE REPORT)
討論(DISCUSSION)
結論(CONCLUSION)


胸部交感神経遮断術をリバーサルするためのビデオ・アシスト胸部手術

要約(Abstract)

胸部交感神経切除術は、手掌多汗症の治療のために、一般的に行われる外科手術となっています。しかしながら、この処置の主要な合併症に、代償性の胴体の多汗症があります。私たちは、代償性の胴体の多汗症および熱中症に至る頭と首の無汗症の、重症なケースについて記述します。胸部交感神経切除術のリバーサル手術のために、自家の肋間神経を使った針状顕微鏡でビデオ・アシストを行っての胸部再手術を両側で実施しました。患者の胴体の多汗症は、リバーサル手術後1カ月以上かけて、徐々に解決されました。


紹介(INTRODUCTION)

胸腔鏡下交感神経切除術は、とりわけ「針状顕微鏡でビデオ・アシストを行っての胸部手術(n-VATS:needlescopic video-assisted thoracic surgery)」アプローチによって行われ、手掌多汗症を治療するためににもっとも一般的に行われる機能的な手術の一つとなっています。しかしながら、代償性の胴体の発汗に至る正確なメカニズムは、依然として分かっていません。私たちは、n-VATSで、採取した自家肋間神経でT2-4レベルの胸部交感神経幹を両側ともリバーサルすることに成功し、その後胴体の多汗症を改善した患者を記述します。


ケースレポート(CASE REPORT)

長年手掌多汗症を患っていた42歳の消防士は、2003年2月に両側3ポートでのn-VATS交感神経切除術を受け、交感神経幹のT2-4レベルを切除しました。彼の手掌多汗症は手術後即座に解決しましたが、彼はすぐに頭と首の領域での無汗症および日々の生活を著しく阻害する重度の胴体の多汗症を発症しました。彼は、24℃の室温で通常の日常生活を行う時でさえも、胴体の汗で服を絶えずずぶぬれになることを訴えました。それは手術前の手汗によって引き起こされる以上の社会的な心理負担を引き起こしました。オキシブチニンを2週間分処方しましたが、有意な改善はありませんでした。最初の手術の6か月後に、彼は屋外任務の5km近くのランニングをする間に熱中症を起こしたというエピソードがありました。その日の気温は30~32℃で、湿度は75~85%でした。当時、彼は頭と首の部分の熱がこもって足の筋肉がけいれんする感じがあり、意識がもうろうすると訴えました。彼は病院に運ばれ、体温が40℃になっていることが分かるとショックを受けました。彼の説明は、シホー(Sihoe)とそのチームが交感神経切除術後に熱中症を起こした患者について以前にレポートした内容と、同様のものでした。彼はその後、流体と電気での蘇生法を行い、十分なケアで治療されました。

患者との徹底的な話し合いの後、交感神経切除術のリバーサルをv-VATSアプローチによって行いました。私たちのn-VATS手術の設定についてはすでに記載した通りです。全身麻酔、二重管腔挿管、および片肺状態で、前回の3mmポート手術部位は5mmに広げられました。前胸部のポート部位は、大胸筋の側面境界1cm横の第4肋間腔に配置されました。カメラポートは、中腋窩線の第7肋間腔に配置され、後部ポートは第4肋間腔の後腋窩線に配置されました。5mmの内視鏡グリップ鉗子とジアテルミー・シザーを前方ポートおよび後方ポートに通し、以前に切除された交感神経幹の上に位置する壁側胸膜を特定し、交感神経幹の尾部および頭部の自由端を露出させるためにそれを切断しました。交感神経幹の自由端のそれぞれを1~2mm切り取りました(図1 aおよびb)。第4肋間神経を覆う壁側胸膜をジアテルミー・フックを使って切開しました。第4肋間神経を約7~8cmのセグメントで採取し、フリー移植片としました(図1c)。それを交感神経幹の2つの自由端を結合するために配置し、その場所はその後フィブリンシーラントで固定されました(図1d)。すべての神経端は、熱傷をさけるため、焼灼をしないはさみでの切り取りを行いました。この手術を反対側面でも繰り返しました。患者は平穏無事な回復を示し、手術の3日後に自宅へ退院しました。リバーサル手術の後1カ月で、彼の胴体の多汗症は主観スコアで10段階中9から4に改善されました。また、手汗、前腕、胸壁から肩のレベルの後方部、それと額に発汗が現れましたが、多汗症の程度ではありませんでした。彼は手術の3カ月後には問題なく日中30~33℃の屋外で10キロを走れるようになり、消防署が要求する身体検査に合格しました。軽度の胸壁の痛みが治まった後、彼はリバーサル手術後4カ月で消防士として勤務を再開することができました。
図1
(a)第2胸部交感神経幹の切り取られた終端(白矢印)
(b)第4胸部交感神経幹の切り取られた終端(白矢印)
(c)5mmの器具で第4肋間神経を内視鏡グリップ鉗子で持ち上げ、ジアテルミー・フックが周辺の付着物を取り除きます。
白矢印は第4肋間神経を示しています。
(d)フリー移植片は第2および第4交感神経幹の切り取られた両端を接続するために配置され、フィブリンシーラントで固定されました。


討論(DISCUSSION)

手のひらの多汗症は、重大な心理負担、機能障害、および社会的ハンディキャップを引き起こす可能性があります。n-VATSによる交感神経切除術は、手掌多汗症でもっとも一般的に行われる手術の1つであり、この手術を受けた患者の95%以上が症状の改善を報告しています。しかし、胸部交感神経切除術は、代償性の胴体の多汗症、味覚性発汗、肋間神経痛、そしてホルネル症候群を含む望まれない結果となる可能性があります。これらのうち、手術後にもっとも頻繁に訴える症状としては代償性の胴体の発汗を報告する人がおり、程度はさまざまですが35~89%にも及んでいます。手掌多汗症以上の障害となる可能性があり、手術に関する患者のQOLや満足度を大きく悪くすることもあり得ます。ロドリゲス(Rodríguez)とそのチームは、重度の代償性発汗のために、手術を受けた6%の患者が後悔していると報告しました。私たちが報告したケースでは、患者は重度の代償性の胴体の多汗症を持っていたが、熱中症を引き起こして仕事ができなくなり、交感神経切除術を受けたことを後悔した、消防士になります。

胸部交感神経をクリップで止める技法は代償性の胴体の多汗症が起きた際にリバーサルできる可能性を秘めているけれども、胸部外科医協会の最近のコンセンサスの取れた声明は「クリップ技法は、それを除去した後、回復できない恐れのある不可逆的なものであると考えるべきである」ということを推奨しています。

体細胞-体細胞の神経移植は末梢神経障害のために長く認識された治療法です。しかしながら、体細胞-自律神経伝達のためにはあまり一般的ではありません。臨床応用として報告されたものは数少ないが、そのうちの1つに脊髄損傷後の神経嚢の治療があります。それは、末端組織の機能を再生するために、自立遠心神経を有した体細胞神経移植片を吻合することによって、人口体細胞-中枢神経系-自律反射の連携を確立することを含んでいました。

2009年に、ハーム(Haam)とそのチームは、19人の患者に行われた肋間神経移植片を用いた交感神経切除術のVATSリバーサルに関するケースシリーズを報告しました。彼らの研究では、9人の患者が代償性発汗の改善を経験し、そのうちの3人は著しく症状が改善されました。私たちが行うn-VATSアプローチは、今回の患者で実証されたのと同様の結果が達成可能であると信じています。

私たちが報告したこのケースでは、第4肋間神経の一部をフリー移植片として採取し、フィブリン糊でそれを固定しました。フィブリン糊が、シュワン細胞の侵入を促進することで、末梢神経再生の初期段階において重要であるということを示唆する証拠が増えています。フィブリン糊の使用に関する役割を調査するさらなる研究は、基礎生理学を解明するためにも、必要となっています。


結論(CONCLUSION)

n-VATSアプローチでの肋間神経移植片を使った交感神経切除術のリバーサルは、技術的に可能であり、代償性の胴体の多汗症の症状を改善させる可能性があります。しかしながら、さらなる臨床研究や機能生理学的研究が、根底にあるメカニズムを解明するためにも、必要となっています。

訳:まるとん

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※リバーサル手術のケースレポート
韓国で行われたリバーサル手術(19例)
オーストラリアで行われたメルボルン技術によるリバーサル手術(2例)
香港で行われたビデオ・アシストによるリバーサル手術(1例)・・・このページ

2017年5月22日月曜日

オーストラリアで行われたメルボルン技術によるリバーサル手術

リバーサル手術は、肋間神経を使ったものだけでなく、それ以外の手法も研究されているみたいです。メルボルン技術という自家静脈神経導管(AVNC:autogenous venous nerve conduit)を移植するケースレポートを見つけました。
この資料の利用の自由が確認できたので、その訳を一部載せたいと思います。
なお、訳に間違いがあったらごめんなさい。

サイト: InTechOpen
記事タイトル: Thoracic sympathetic nerve reconstruction for compensatory hyperhidrosis: the Melbourne technique

目次
要約(Abstract)
背景(Background)
目的(Objective)
方法(Methods)
結果(Results)
結論(Conclusions)
紹介(Introduction)
メルボルン技術(The Melbourne technique)
ケース1(Case 1)
ケース2(Case 2)
討論(Discussion)
結論(Conclusions)


代償性発汗のための胸部交感神経の再建:メルボルン法

要約(Abstract)

・背景(Background)

代償性発汗(CH)は、原発性多汗症を管理する上で行われている胸腔鏡下交感神経切除術(ETS)の潜在的な合併症となっています。代償性発汗は、心理社会的に大きな影響を与えますが、治療の選択肢が少ない永続的な状態と考えられています。交感神経経路を再構成することを目的としたさまざまなリバーサル技術が開発されていますが、結果は一貫していません。

・目的(Objective)

ETSの後3~5カ月以内に発症した重度の代償性発汗を治療するために開発された新しい技術であるメルボルン技術によるリバーサル手術の2つのケースレポートを示します。2人の患者は8年にわたりフォローアップを行いました。

・方法(Methods)

メルボルン技術では、以前に神経遮断された胸部の交感神経連鎖を処置するのに、内視鏡でのアプローチを行います。これら2つのケースにおいて、右側だけの処置を行いました。腹腔内の神経移植片を使うのではなく、自家静脈(autogenous vein)の移植片を手術時に採取し、神経切除された二次神経欠損部を橋渡しする神経導管として使用しました。多汗症の有効性が確認されているDLQI(皮膚科学で使われるライフ・クオリティ・インデックス)とQOL(Quality of Life)のアンケートを使用して、長期の効果を測定しました。

・結果(Results)

どちらのケースでも、患者はQoLスコアにおいて術後改善を報告しました。しかし、改善は、1方のケースの方が他方のケースと比較して顕著でした。即時においても長期においても、有意な術後合併症はありませんでした。

・結論(Conclusions)

メルボルン技術は、代償性発汗のために行われている他のリバーサル手術で用いられる腹腔内の神経移植片や神経伝達物質の代替物として、有望です。


紹介(Introduction)

多汗症は、環境条件や体温調節の必要性といった変化に適応するために必要とされる量を超え、不釣り合いに増加した汗が生成されることを特徴とする症状です。男性においても女性においても一般人口の2.9%に等しく影響を及ぼしています。多汗症は良性疾患ですが、しばしば患者に恥ずかしさといった深刻な心理状態を引き起こします。

多汗症は全身で起きることもあり得るし、局所的に起きることもあり得ます。全身多汗症は身体全体に影響を及ぼし、通常は本来二次的な現象になります。局所多汗症(すなわち原発性多汗症)は、通常特発性で、特定の身体部位(最も一般的にはわきの下、手のひら、足の裏、顔)に現れます。環境的な刺激や感情的な刺激に応答する交感神経系の過活動が原発性多汗症の主な原因と考えられており、これ故に非外科的治療で処置できない重症な場合には交感神経切除術の根拠となっています。

胸腔鏡下交感神経切除術(ETS)は、1950年代から進化した原発性多汗症の最も確実な外科的治療法です。ETSは胸部交感神経連鎖を電気焼灼したりクリッピングしたりすることを含んでいて、汗腺へ信号を伝達する神経路や神経節を遮断することを意図しています。ETSの有効性と利点は十分にドキュメント化されています。高い成功率と低い羅漢率となっていますが、しばしば著しい長期の合併症、すなわち代償性発汗(CH)に関連付けられます。それは術後6カ月になって発生し、身体の他の領域とりわけ胴体と下肢に過剰な汗をかきます。

ETSによって起きる代償性発汗の実際の発生率を算出することは、定義や身体変化の度合いを標準化できていないために達成が困難となっています。ライ(Lai)とそのチームは代償性発汗の重症度の尺度を導入しましたが、標準化された客観的な測定機器なしでは評価は広く主観的となり、その適用性は疑わしい。それにもかかわらず、術後の代償性発汗の発生率は30%から100%の範囲であり、重度の代償性発汗では43%の高さになっています。

代償性発汗の正確なメカニズムは不明ですが、次のようなことが含まれる理論がいくつかあります:蒸発によって熱を下げる身体の有効エリアが相対的に減少することにより損傷を受けていない汗腺機能を持つエリアが過剰に汗を生成する、ということや、ETS後に視床下部の熱制御機能の感受性が増え反射反応が変化したこと、などです。

代償性発汗の治療は困難です。実際問題として、ETSのさまざまな外科技術や手法は代償性発汗の発生を最小限に抑えるために絶えず改善しているのですが、現在まで確実な治癒方法は存在していません。それ故に、代償性発汗のためのリバーサル手術はいまだ有望な結果を得ようとさまざま試みられています。

今日まで、胸部交感神経を再建するための神経導管(nerve conduit)として自家静脈移植片(autogenous vein graft)を用いた代償性発汗のためのリバーサル手術の報告はありません。したがって、私たちはこの今までにない技術(それは2人の患者に実施しました)および彼らの長期結果を提示します。


メルボルン技術(The Melbourne technique)

オーストラリアの外科医がメルボルンで開発した新しい外科技術が2人の患者に適用されました。この技法では、腕を外に向けた半座位(ファウラー位を修正した姿勢)に患者を配置する必要があります。この技法は、全身麻酔を行い、二重の内腔気管内チューブを使用しました。いずれの患者においても、右側のみ実施しました。前回手術痕を超え、前腋窩線、第5肋間腔の高さにある中鎖骨線、および第3肋間腔の高さにある中腋窩線に沿って、3つのポート(1mm×5mm、2mm×3.5mm)が取り付けられました。CO2で気胸を制御し、3.3mm 30°の望遠鏡(KARL STORZ、GmbH&Co、KG、Tuttlingen、Germany)で胸膜腔を検査しました。フック・ジアテルミーとはさみを注意深く使うことによって、胸膜癒着と胸膜に「窓」を作りました。T2交感神経幹を第2肋骨のネック部と第3肋骨を超えた末端セグメント部に特定しました。いずれの症例でも、前回手術位置にチタンクリップはありませんでした、もしあったらそれらは除去したでしょう。ケース1では、T2交感神経幹の近位端および遠位端のそれぞれに形成された神経腫を切除し、およそ1cmの欠損を残しました(図1)。ケース2では、T2-3交感神経幹神経腫を注意深く神経刺激を行って切除し、1cmの欠損を生じました。

図1
(A)手術部位
(B)神経腫を取り除いた後の右側第2胸部交感神経連鎖の近位端と遠位端のイラスト
a:右側第2肋骨、b:近位部、c:遠位部、d:内視鏡吸気管
どちらのケースにおいても、表在静脈(superficial vein)の断片(長さ5cm)を左前腕から切り取りました。その静脈をヘパリン処理した生理食塩水で洗い流し、その方向を逆転させました。切り取った静脈は欠損の長さにリサイズし、静脈両端は神経幹の(近位端と遠位端の)両端に適合するように切り開かれました。端と端の接合はフィブリンシーラント(ISSEEL™、Baxter International Inc.、USA)層で安全に位置を固定しました。(図2、図3、図4)
図2
(A)手術部位
(B)右第2胸部交感神経近位端への自家静脈神経導管(AVNC)接合のイラスト
a:右側第2肋骨、b:AVNCの広げられた終端、c:右側第2胸部交感神経節、d:フィブリンシーラント
図3
(A)手術部位
(B)右第2胸部交感神経遠位端(フィブリンシーラント付き)への自家静脈神経導管(AVNC)接合のイラスト
a:右側第2肋骨、b:AVNCの広げられた終端、c:右側第3胸部交感神経節、d:フィブリンシーラント
図4
(A)手術部位
(B)自家静脈神経導管(AVNC)と胸部交感神経との接合のクローズアップのイラスト
a:右側第2肋骨、b:AVNCの広げられた終端、c:右側第2胸部交感神経節、d:フィブリンシーラント
最後に、肺を再拡張し、胸腔内カテーテルを胸部X線で気胸の完全な解消が確認されるまで24時間その場に残しました。手術の平均時間は120分でした。


ケース1(Case 1)

右利きの58歳の白人男性である患者Aは、QOLに影響を及ぼす重度の原発性顔面多汗症および赤面症のため、2002年12月に左右のT2およびT3交感神経幹をクリップするETSを受けました。彼は顔面発汗と顔面紅潮の著しい減少に気づき、多汗症疾患重症度スケール(HDSS)のスコアで初期値4から1を達成しました。しかし、ETSの5カ月後に、彼は胴体およびわきの下の代償性発汗を発症しました。ETSの6カ月後と24カ月後に、T2クリップとT3クリップをそれぞれ除去しました。チタンクリップを除去しDitropan® (Oxybutynin chloride)を試したにもかかわらず、彼は背中とわきの下に過度の発汗を経験し続けました。

ETSのおよそ5年後に、彼はメルボルン技術によるリバーサル手術を受けました。瘢痕化した右胸部交感神経鎖の1cmのセグメントを切除しましたが、それは周囲の線維性基質を持ち合わせる神経としてのちに報告されました。

リバーサル手術の後6カ月以内に、彼は口の周りの汗が戻ったことに気づき、それは許容できると報告しました。同時に、彼は背中とわきの下の発汗において軽度から中程度の減少を観察し、こちらも許容レベルであると報告しました。

リバーサル手術の5年後において、彼は背中に軽度から中程度の発汗を経験し続けましたが、リバーサル手術後の程度はそれほど悪性というわけではなくなっていました。DLQI(皮膚科学で使われるライフ・クオリティ・インデックス)スコアはリバーサル手術前の12から6に改善され(すなわち患者の生活に対する中程度の効果)、QOLアンケートはリバーサル手術後5年で若干の改善が認められました。


ケース2(Case 2)

右利きの49歳の白人男性である患者Bは、QoLに影響を及ぼす重度の原発性顔面多汗症のため、2001年に両側ETSを受けました。両側のT2交感神経幹を電気焼灼で切除しました。その後、顔面発汗は顕著に減少したことに気づき、HDSSスコアは4から1への改善を示しました。しかし、ETSの3か月後に、彼は胴体とわきの下を伴う代償性発汗を発症しました。いくつかの非外科的手法(CTガイド付き腰部交感神経嚢ブロック、プロバンサイン® (Propantheline bromide)、Ditropan®(塩化オキシブチニン)、ドライソル(塩化アルミニウム六水和物)スプレー)を試したものの、効果は得られませんでした。

ETSの約8年後に、患者はメルボルン技術によるリバーサル手術を受けました。わきの下の多汗はリバーサル手術後3カ月以内に改善しました。リバーサル手術の4年後、胴体の多汗は中程度のままであったが、顕著ではあるが許容範囲に口周辺の発汗が戻っていることに気づきました。患者のDLQIスコアはリバーサル手術前の18から15(すなわち患者の生活に対する非常に大きな影響)に改善され、QoLアンケートもリバーサル手術後4年でおよそ同じように改善しました。


討論(Discussion)

ETS後のリバーサル手術は、通常、治療法がほとんどない重度の代償性発汗を持つ患者のためのものです。クリップ法で胸部交感神経切除術を行った患者においては、その後のクリップ除去もまたリバーサル手術の一種と考えられています。1人目のケースでは、T2とT3の両方のクリップ除去を行っても(ただし右側のみ)、症状は緩和されませんでした。

リバーサル手術の基本的な目的は、いったん分断された交感神経幹を再構築することによって、代償性発汗の重症度を低下させることであり、これはまた医原性神経腫を切除することも含んでいます。重度の胸膜癒着に遭遇しない限り、基本的なアプローチは前回手術の胸腔鏡切開痕を通じて胸腔鏡で行われます。

テラランタ(Telaranta)は、ETS手術後に代償性発汗で苦しむ1人の患者に、胸腔鏡を用い、ふくらはぎの移植片を使った自家神経移植で左右両側の胸部交感神経の再建を行いました。患者の症状およびQoLは術後2.5年で改善し、vapometerという水蒸気測定器で測定した発汗パターンは正常化されたことを実証しました。ハム(Hamm)とそのチームは、両側の胸部交感神経欠損部へ肋間神経の遠心側を移植することによって、リバーサル手術を行いました。すべてのケースにおいてフィブリンシーラントは神経接合部前方へ適合されました。密集した胸膜の癒着を持った1ケースでは開胸での手術を行いましたが、それ以外はすべて胸腔鏡で行われました。19人の患者のうち9人は、平均して1.83年後に、軽度の代償性発汗症状の明確な解決を報告しました。

三浦は、後側部の開胸手術で縦隔の腫瘍を切除し、それによってできた胸部交感神経鎖にできた3cmの欠損を、肋間神経の移植および6/0ナイロンの神経縫合とフィブリン糊の補強で、再建することに成功しました。

神経移植を使った交感神経鎖の修復性を示す他の研究もあります。キム(Kim)とそのチームは、根治的前立腺摘除術の手術中、ふくらはぎの自家神経移植をすることによって左右両側の切除された海綿状の神経を再建しました。18カ月後に観察された術後結果は良好でした。ヒョチ(Hyochi)とそのチームによって行われた動物実験研究では、自家神経移植片(結腸神経)および体細胞神経移植片(陰部大腿の神経)の両方を使用することにより、下腹部神経を通じた交感神経路の有効な回復を示しました。

神経修復のために血管導管を使用するという考え方は1891年にさかのぼります。自家静脈の神経導管(AVNC)の使用は1982年まで神経移植の代替物としては認識されませんでした。当時チウ(Chiu)とそのチームは、静脈内腔(lumen of a vein)を用いることによって、近位神経束の再生をうまく促進することを証明しました。修復手術後2カ月以内に遠位端に到達しました。それ以降、神経導管の研究では、ベースラインよりも幾分遅かったものの、静脈移植片による神経再生を確認してきました。しかしながら、これは神経移植による欠損の回復と同等レベルのものでした。最初の実験は動物で行われましたが、引き続き数多くの人間での研究が行われ、AVNCで指先の神経欠損部をブリッジングした修復では即時および時間をかけての両方の回復の感覚が示されました。

表在静脈(superficial vein)移植片の採取は技術的には無制限に供給できるものであり、わずかな線状の傷跡しか残さない。さらに、静脈内腔(lumen of a vein)は、神経再生の理想的な環境を生成し、瘢痕組織に浸食されることを妨げ、神経因子の拡散を認めることができます。結果として、静脈導管は、シリコンやマクソンチューブといった合成導管よりも好ましい可能性があります。これらの素材は異物反応や軸索圧迫によって瘢痕組織化する可能性もあるからです。

AVNCを用いた神経再建の成功を制限するいくつかの要因があります。動物においても人間においても、AVNCが大口径で、複合神経で、そして3cm以上の長さ間隔でブリッジングするために使われたとき、神経再生の臨床結果は乏しいということが示されています。これは、理論的には、長距離のAVNCによって神経因子が希釈する影響によるものであり、その結果軸索成長を阻害しているということです。神経欠損が3cmよりも長い場合、腹腔内の神経移植片の方がAVNCよりも優れていることが示されました。

私たちの患者のリバーサル手術の長期結果に使用した評価ツールはDLQIとQoLアンケートでした。DLQIは、皮膚科学で行われる最初のQoLアンケートであり、フィンレー(Finlay)とカーン(Khan)によって開発されました。これは、原発性多汗症や代償性発汗を含めたさまざまな皮膚の状態のために、十分に検証された測定尺度となっています。

アミール(Amir)とそのチームによって紹介され、カンポス(Campos)とそのチームによって適用されたQoLアンケートは、しばしばETS後の患者たちを評価するのに使われています。

私たちが行った2つのケースでは、DLQIとQoLスコアの全体的な改善は、程度は異なりますが、間違いないものでした。


結論(Conclusions)

メルボルン技術を用いたこの数少ない経験は、ドナー部位の羅漢率を最小限に抑え、代償性発汗に対する安全な治療と効果を約束する選択肢であることを示しています。まだ一般的ではありませんが、この再建技術を受ける患者をもっとたくさん集め、その成功により光を与えるために、それら結果をレビューしていく必要があるでしょう。

訳:まるとん

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※このページについての私の補足コメントがこちらにあります。
→ コメント広場 Page.3 - 2017.5.21

※リバーサル手術のケースレポート
韓国で行われたリバーサル手術(19例)
オーストラリアで行われたメルボルン技術によるリバーサル手術(2例)・・・このページ
香港で行われたビデオ・アシストによるリバーサル手術(1例)

2017年5月19日金曜日

今日の神経の流れる感触(5/19)

だんだん暑くなってきましたね。
私は5月の日差しでは代償性発汗はもう全くと言っていいほど感じなくなっています。肌に水分がうっすらつくだけはしますが、シャツに汗じみがついたりすることはまったくない快適な状態にまでなりました。

神経の流れる感触はやはり激しいです。起きてすぐは全く感じないのですが、活動を始めると一日中ずっと感じています。特に日に当たったりするとものすごくて、5本の指先全部に流れてしびれます。でもそれが代償性発汗を減らしているので気分は楽です。

ここ最近の調子と言えば、ひどかった頃に比べてずいぶん良くなっています。でも腕の震えがあって、ボーリングでもした後のような疲労感があったりうまく力が入らなかったりするときがあります。同じように頭へも神経が流れているのが分かっていて、そういったときにはあごが動かしづらくてしゃべりづらかったりちょっと頭の回転が鈍ったりとしています。でも以前もこういったことはあったし、一時的なものと思ってあきらめてます。

あと、ここ1,2週間で手汗と足汗が一回り増えました。今つながろうとしている神経が影響しているみたいです。
手汗も足汗もじっとりべたべたな感じになります。元通りにはまだもうちょっとな感じですね。私はもともと手汗でETSを受けたわけではないので、手汗が元通りに戻ることに何の心配もなかったりします。足汗がもし気になるレベルまで戻っちゃったら、ドライオニックと塩化アルミニウムになんとか頑張ってもらおうと思ってます。

今日はひさしぶりに献血をしてきました。
最近全然やってなくて、2年半ぶりですね。
183回目、ちょっと自慢です。

では。

まるとん

2017年5月18日木曜日

「韓国で行われたリバーサル手術の研究レポート」を訳して感じたことや気づいたこと

ここ数日かけてまとめていたのですが、韓国でのリバーサル手術の研究レポートの日本語訳を作りました。「リバーサル手術について」の記事一覧にも載せました。

特筆すべきこととしては以下のことが書かれていました。

・移植元の神経としては、ふくらはぎの神経よりも肋間神経の方が優れているということ。
→私はふくらはぎの神経を使いましたが、フィンランドでも現在の術式は肋間神経での移植ですね。

・手術は左から行ったということ。
→フィンランドのリバーサル手術は反対に右側から行っているようです(※こちらを参照)。つまり、絶対そうしなければならない特別な理由があるというわけではなさそうです。

・神経の吻合(ふんごう)は縫合よりもフィブリン糊を用いた方が優れていること。
→フィンランドのリバーサル手術でもフィブリン糊を使っているようです(※こちらを参照

・半数がリバーサル手術によって症状が改善された。
→韓国のこのレポートでは半数しか改善されなかったととらえることもできますが。。。
フィンランドのリバーサル手術の術後アンケート集計結果によれば、19人中14人が効果があったという回答となっています。なお、こちらの記事(ETSを受けて満足している人と後悔してる人・リバーサルを受けて効果があった人となかった人 - 過大評価と過小評価)にも私の考えを書いていますので、参考にしてくださいね。

・ETS手術を行ってからリバーサル手術を行うまでのインターバル期間でリバーサル手術の効果の影響は認められなかった。
→フィンランドのドクターは期間が長いほど効果を得られるまでに時間がかかるかもしれないと説明されていますからここも意見が異なっていますね。私もETS手術を受けてから(1年とか2年未満とかの)早い期間であれば影響はあると思いますが、ある程度の年月が経った場合であればそれほどの影響はないんじゃないかと考えているので、これらともまた少しばかり異なる意見だったりします。

・19例で行い、いずれも再建はうまくいった。
→1例のみ癒着のために胸部の切開で行っているが、その他は内視鏡で行っています。
→フィンランドのリバーサル手術では(主にT2を)つなげられなかった人が何人かいます。これはリバーサル手術の技術の問題というよりかはETS手術時の切除の仕方に依存しているようです。こちらの記事(フィンランドにリバーサル手術を受けに行ったけど期待通りつなげることのできなかった人たちのこと)にもいろいろとまとめています。そこに記載していますが、フィンランドのリバーサル手術では癒着を理由として神経がつなげられなかった日本人は今までにはいなかったことも付け加えておきます。(ただし韓国人で1人、およびドイツ人で数名いたといったことは以前聞いたことがあります。国による体質の違いによるものなのかETS手術のやり方によるものなのかまではちょっとわからないです。)

・4名に痛みやしびれの後遺症が残った。
→フィンランドのリバーサル手術ではそこまでの後遺症は(私がみんなから聞いている限りでは)聞いたことがないです。もちろん絶対ないというわけではないでしょうが、この韓国のレポートは多い気がします。

・腫瘍による交感神経切除で肋間神経の移植をして効果があったという日本の臨床結果が掲載されています。
→肋間神経を使った交感神経幹の再建を行うという行為自体(つまりリバーサル手術と同じオペレーション)は日本でも行っているということになります。

では。

まるとん

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韓国で行われたリバーサル手術の研究レポート

以前リバーサル手術を行っている所のページでも書いたことがあるのですが、韓国で行われたリバーサル手術の研究レポートがあります。
この資料の利用の自由が確認できたので、その訳を一部載せたいと思います。
なお、訳に間違いがあったらごめんなさい。
フィンランドと完全に同じようにつなげているかどうかとかはわからないです。つなげ先のところとかですね。でも、肋間神経を使って移植するイメージとかは理解できるんじゃないかと思います。

サイト: InTechOpen
記事タイトル: Sympathetic Nerve Reconstruction for Compensatory Hyperhidrosis after Sympathetic Surgery for Primary Hyperhidrosis

目次
要約(Abstract)
紹介(INTRODUCTION)
材料および手法(MATERIALS AND METHODS)
結果(RESULTS)
討論(DISCUSSION)


原発性多汗症の交感神経手術におけるその後の代償性発汗のための交感神経再建手術

要約(Abstract)

私たちは原発性多汗症の交感神経手術におけるその後の重度の代償性発汗患者に対し、肋間神経を用いた交感神経再建手術を行い、その手術成績を分析しました。2004年2月から2007年8月まで、肋間神経を使った交感神経再建手術を19人の患者に行いました。対象患者は原発性多汗症の胸腔鏡下交感神経手術後に重度の代償性発汗を示していました。交感神経の再建は、重度の胸膜癒着だった1患者を除き、胸腔鏡手術によって行われました。初回の交感神経手術と交感神経再建手術の間隔の中央値は47.2カ月(範囲は3.5カ月から110.7カ月まで)でした。再建手術後の代償性発汗の改善は9人の患者で見られ、そのうちの3人は著しい症状の改善が見られました。肋間神経を用いた交感神経再建手術は、原発性多汗症の交感神経手術におけるその後の重度の代償性発汗のための、有用な手術選択肢の一つとなりえるだろう。


紹介(INTRODUCTION)

原発性多汗症は顔、手のひら、わきの下で過剰な汗が出るという特徴のもので、人口の0.6~3%で起きるありふれた疾患です。ククス(Kux)が胸腔鏡下交感神経手術を行って以来、過去数十年の間、顔、手のひら、わきの下の多汗症の外科的な手術選択肢として一般的なものとなっています。胸腔鏡下交感神経手術は多汗症の恒久的な改善を提供するけれども、しばしば代償性発汗と呼ばれる重症の複雑な事態が付随して発生します。代償性発汗を減らすため、胸腔鏡下交感神経手術は交感神経の切除範囲を減らす試みがされてきましたが、そういった手法では代償性発汗の発生を著しく減らすことはできませんでした。私たちは胸腔鏡下交感神経手術後に重症の代償性発汗を持つようになった19人の患者に対して肋間神経を使った交感神経再建手術を行い、その手法の結果を評価しました。



材料および手法(MATERIALS AND METHODS)

2004年2月から2007年8月までに、私たちは184人の原発性多汗症患者に胸腔鏡下交感神経手術を行いました。これらの患者のうち、重度の代償性発汗となった19人の患者に対して肋間神経を用いた交感神経の再建手術を行いました。14人の患者が男性で、5人が女性でした。年齢の中央値は28歳で、範囲は19歳から61歳まででした。2人の患者はフォローアップ期間中に失われました。この研究は私たちの病院の施設審査委員会によって承認されました。

再建手術の全過程は、全身麻酔の下、単一の内腔器官内チューブを用いて行われました。患者は腕を伸ばして行うセミファウラー位で行いました。重度の胸膜癒着だった1患者を除く18人の患者で胸腔鏡手術が可能でした。左側から始め、前回の胸腔鏡手術痕に沿って2つの別個の皮膚切開をし、胸腔鏡ポートを設置しました。肺を収縮させるために10mmHg未満の圧力でCO2ガスを胸腔内に送り込んだ後、5mmの胸腔鏡で胸腔内を検査しました。ほとんどの患者は以前の交感神経手術部位周辺に最小限ながらも胸膜の癒着を有していました。肋間の神経血管束を5~7cmの長さで解剖し、遠位末端部を切除しました。前回手術した交感神経の近位および遠位部を露出させた後、「露出させた交感神経の近位部および遠位部の神経の覆い」と「摘出した肋間神経の終端」を電気外科チップクリーナー(electro-surgical tip cleaner:Surgisite®, Ethicon, Gargrave, Skipton, UK)で除去しました。「肋間神経の終端」を、「露出させた交感神経の近位部と遠位部の間」に配置し、そしてフィブリン糊(フィブリンはタンパク質の一種)を交感神経と肋間神経の接地面に適用しました(図1)。同様の過程を右側でも繰り返しました。交感神経クリップを使った遮断の場合では、この過程をクリップを取り除いた後で行いました。重度の胸膜癒着だった1人の患者においては、交感神経の再建は胸腔鏡下切開術で行いました。すべての患者は外科的な合併症を起こすことなく退院しました。
図1
(A)術部のイラスト。
(B)吻合(ふんごう)部の拡大図 - 「肋間神経の遠位部(a)」は、
 交感神経と肋間神経とを結合させるため、「 露出させた交感神経の 
遠位末端および近位末端の間(b)」に配置しました。
私たちは、肋間神経を用いた交感神経再建術を受けた全患者の臨床チャートをレビューしました。患者たちに対し、手術効果および術後合併症についての電話アンケートを行いました。代償性発汗の改善の指標は、「Definite:明確な改善」、「Mild:軽度の改善」、または「Absent:改善なし」で評価されました。「Definite」は患者が再建手術後に十分に満足したと感じ、「Mild」はある程度満足し、「Absent」は患者が改善を感じなかったことを意味しています。交感神経再建術とアンケートの間の平均間隔は22カ月(範囲は1カ月~45カ月)でした。

1人の患者(表1における患者番号17番)においては、手術前、手術後にデジタル赤外線サーモグラフィー画像を撮りました。
患者の特徴と手術結果

結果(RESULTS)

原発性多汗症患者は、顔が9人、手のひらが8人、わきの下が1人で構成され、1人は顔と手のひらの多汗症の両方を持っていました。表1は交感神経再建術の患者の特徴と結果を示しています。最初の原発性多汗症交感神経手術の内訳は、5人がT3切除、8人がT2切除、1人がT2,3切除、1人がT2,3,4切除、2人がT2クリップ術、1人がT3クリップ術、そして1人がT2クリップ+T3切除となっていました。すべての患者は胸腔鏡アプローチで手術を行いました。

胸部と背部が代償性発汗の最も一般的な部位でした。最初の原発性多汗症の胸腔鏡下交感神経手術と交感神経再建手術の間隔の中央値は47カ月(範囲は4カ月から111カ月まで)でした。15人の患者の交感神経再建術においてはR3肋間神経を用い、2人にはR4肋間神経を用い、1人にはR2肋間神経を用い、1人にはR3とR5の肋間神経を用いました。

3人の患者は再建術の効果が「Definite」と答え、6人は「Mild」、8人が「Absent」と回答しました。術後の合併症は、2人の患者が胸部のしびれ、2人が胸部の痛み、そして1人については3カ月後に自然に治癒したが一時的な眼瞼下垂がありました。

1人の患者で行った手術前と手術後のデジタル赤外線サーモグラフィー画像では、胸部と背部の温度の変化を示しました。術後の胴体温度は術前の温度よりも高くなっていました。
図2
(A)および(B)は交感神経再建術前と術後3カ月に取得した赤外線
サーモグラフィー映像です。胸部において明らかな熱変化が見られます。

討論(DISCUSSION)

ククス(Kux)が胸腔鏡下交感神経手術を提唱して以来、胸腔鏡や特殊器具の近年の発達で手術はより容易になりました。そして、高い改善率、短期間での入院、美容上の優れた結果のため、多汗症のための選択肢として扱われるようになりました。それには多くの利点がありますが、胸腔鏡下交感神経手術の後、最も一般的で耐え難い代償性発汗に苦しむ患者もいます。以前の報告によれば、代償性発汗は交感神経手術後の患者の59.8~90%で発生します。代償性発汗のメカニズムは明らかになっていませんが、体温調節機能の代償と関連していると思われます。代償性発汗の発生率およびその程度は交感神経連鎖の切除範囲に関連しているように見えるため、臨床医の中には切除範囲を限定的にすべきであると提唱するものもいます。これらの理由から、異なるレベルの交感神経遮断術や交通枝切断術やクリップ術-これらの手法の効果についていは論争が残っているが-といった多数の治療法が切除範囲を減少させるために試みられてきました。軽度の代償症状では、アルミニウム系の化合物、イオントフォレーシス、および全身または局所用の抗コリン薬といった発汗抑制法で効果を得られることがあります。しかしながら、もし症状が深刻ならば、それを管理するのはより難しく、満足いく結果を得ることができないのです。

フィリッポー(Philipeaux)とヴァルピアン(Vulpian)が1870年に最初の神経移植実験を報告して以来、数多くの神経移植の成功事例が整形外科手術分野で報告されました。胸部手術の分野では、ショーラー(Schoeller)のチームが、縦隔腫瘍を切除した患者に対し、腓腹神経(ひふくしんけい:ふくらはぎの神経)を用いた横隔神経再建術を成功したと報告しました。テラランタ(Telaranta)は、腓腹神経を使った交感神経連鎖の再構成によって、手掌多汗症のために交感神経切除術を受けた男性患者の代償性発汗を軽減させたと報告しました。三浦のチームは、腫瘍による交感神経の切除後に、肋間神経を用いた交感神経再建術が有用であると報告しました。

腓腹神経は神経移植にもっともよく使われる神経ですが、肋間神経は腓腹神経に対していくつかの利点を持っています。第1に、肋間神経は腓腹神経よりも交感神経線維を多く持っており、これゆえに肋間神経は交感神経再建術により適しています。第2に、腓腹神経は切り出したフリー移植片としてのみ利用できますが、肋間神経はペディクル移植片として使用しそして神経血管束として摘出することができます。したがって、移植片に十分な血液供給を維持することができます。第3に、肋間神経を胸腔鏡によって採取することができます。したがって追加の切開を必要とせず、ドナー部位の罹患率が減少します。私たちの経験によれば、重度の胸膜癒着だった1人の患者を除くすべての患者において胸腔鏡での肋間神経採取を行うことができ、肋間神経が交感神経再建術のための有用な移植片であることを私たちは確信しました。

神経吻合には神経鞘縫合糸や束状縫合糸が最もよく使われますが、神経の縫合材料に起因する異物反応という別の問題を引き起こす可能性があります。縫合技術を使わず、フィブリンシーラントを使用した神経吻合の成功報告もあります。交感神経再建手術で顕微鏡での縫合技術を行う場合、必然的に開胸術を必要とします。それ故に、私たちは神経吻合のためにフィブリンシーラントを使用しました。この過程で行われる吻合タイプは端側神経縫合術を改良したものです。

神経は一般的に元の方向に向けて吻合されるのですが、フリー移植片はこの手術において元の方向に向けて吻合するように準備されるべきです。逆方向の吻合は神経伝導に影響を及ぼさないといったことを明らかにした報告もあります。

交感神経再建術の効果についてのアンケートでは、9人の患者が「Definite」あるいは「Mild」と回答しました。結果が「Definite」だったと回答した3人の患者において、代償性発汗が減少し、胸腔鏡下交感神経手術後の無汗となった障害領域も改善しました。軽度の改善(Mild)と回答した患者は、発汗の量と頻度が減少したけれども、依然として不快な代償性発汗を訴えました。しかしながら、8人の患者においては、交感神経再建術は何の効果も示しませんでした。これらの再建手術の結果は、本研究での症例数が少ないこともあり、年齢、性別、障害領域、胸腔鏡下交感神経術からの期間といったパラメータでの違いは見られませんでした。

デジタル赤外線サーモグラフィー映像は​​、体温分布の評価を行うのに有用なツールとなっています。この映像では、発汗領域は他の領域よりも低い温度を示します。交感神経再建の前と後で、私たちはT3交感神経切除後に胸部の代償性発汗を訴えた22歳男性のデジタル赤外線サーモグラフィー映像を行いました。再建手術後に胴体温度は上昇しており、この結果は患者の症状と一致しました。

患者の数がデータ解析には不十分でありますが、再建手術の結果は交感神経手術と再建手術のインターバル期間とは一致しませんでした。交感神経再建術の正確な効果を評価するためには、より多くの症例とより長い期間での術後経過観察が必要です。

再建手術の術後合併症は5人の患者に見られました。2人の患者においては耐えられる程度ではあるものの胸壁の痛み、2人の患者では胸壁の痺れとなっています。1人の患者は眼瞼下垂を訴えましたが、3カ月後に自然解消しました。

質問票は交感神経手術後の手術結果を評価するために使用されています。しかしながら、質問票は客観的なものではないという制約があります。さらに、代償性発汗は気候や季節によっても異なるため、アンケート調査のタイミングは重要です。今回の調査において、アンケートは韓国では比較的涼しくて乾燥する10月に行いました。これはこの研究のもう一つの制限となっています。

結論として、私たちの結果は、肋間神経を用いた交感神経の再建が重症の代償性発汗患者に対する有用な外科的手法の一つとなり得ることを示唆しています。患者の半数が結果に満足しました。再建手術は、重症の代償性発汗を持つ患者を高度に選択し、非常に注意深く決定されなければならない。

訳:まるとん

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※このページを書いてみてそれについてまとめたのがこちらになります。
「韓国で行われたリバーサル手術の研究レポート」を訳して感じたことや気づいたこと

※リバーサル手術のケースレポート
韓国で行われたリバーサル手術(19例)・・・このページ
オーストラリアで行われたメルボルン技術によるリバーサル手術(2例)
香港で行われたビデオ・アシストによるリバーサル手術(1例)

2017年5月15日月曜日

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2017年5月9日火曜日

3か月ぶりです

まるとんです。

お久しぶりですね。
2月に最後の記事を書いて以来、久々の更新になります。
いくつか書きたいことがあるので、まとめて書きます。

体調のこと
2月に激しく神経が流れていることを書いたのですが、その神経はつながりきった感触がありました。2/23に最後の記事を書いてその翌日、2/24のことでした。
この時の神経の流れはかなり激しくて、これで術後の回復が完全に終わるかとすごく期待していたのですが、まだつながりきっていない神経が残っていました。右肩のぽきぽきといっていたところです。そんなこともあって、ブログも休んでしばらく養生することにしていました。
神経の流れる感触は今までに書いてきたことと同じような感じが続いていました。
・目がチカチカしたり、パニックが起きたり、めまいがあったり、、、
・目がしみて涙がボロボロでたり、視界が真っ白になったり、、、
・息苦しくて深い呼吸で一日中過ごしたり、寒気に襲われる日があったり、、、
・頭痛のひどい日があったり、お腹下した日があったり、、、
・寝汗がひどかった日があったり、背中が熱くなって汗がだらだらと出てきたり、、、
・足汗がじとっと出る日があったり、脇汗がだら~っと出る日があったり、、、
・そんないろんなことがあるとまた神経の流れが速くなるのを感じたり、、、
とそんな感じでいろいろとありました。残ったところがつながりにくかった太い神経のせいか、そういった変化は激しいことも多かったです。
次の記事は神経が完全につながりきったら書こうかなと思っていたのですが、いつまでたっても終わらないこともあり、もう3か月近く経つし、調子も良く落ち着いていることもあり、また記事書くことにしました。


最近リバーサル手術を受けた人・受ける予定の人のこと
去年12月にヒロさんがリバーサルを受けて以降では、3月にリバーサル手術を受けた友人がいます。
手術は無事うまく行ったそうですが、費用について少し今までの人と異なっていて、手術、入院、事務費用で13456.9ユーロ、ホテルはその費用に含まれず、最近受けた人と同じホテル(Scandic Park Helsinki)を別途自分で申し込んだということです。
あと、今月末、5月30日にもリバーサル手術を予定している友人がいます。
聞いた話ですと、リバーサル手術を受けるためのモニタリングフォームは現在機能していないようで、Rantanen先生にメールで直接コンタクトを取ったとのことです。


リバーサル手術を申し込む人へ
上に書いた通り、現在モニタリングフォームでの問い合わせは、しても届かないんじゃないかと思います。もしリバーサル手術を受けたいという場合、ドクターの連絡先をお伝えすることはできるので、ご自身で直接コンタクトを取ってください。英語なら問題ないです。最初の1通を送れれば、あとは通訳さんを通じて日本語でやり取りできるんじゃないかとは思います。
もし手続きの仕方で何か新しいことが分かれば、お伝えしようと思います。


Rantanen先生からのメールの返信
1/11の記事でRantanen先生へメールの問い合わせをしたことを書いたのですが(※こちらの記事を参照)、その返事を2/26にもらいました。

<問い合わせの概要>
神経チューブやIPS細胞といった自家神経移植以外の技術についてのランタネン先生の見解を教えて欲しい。
・こういった技術のリバーサルへの適用の研究や将来性はあるか?
・やはり肋間神経を使うのがベストか?
※これが以下の項番「C」となっています。

<ランタネン先生の返事>
Sorry for the delay in answering.
It is sad that the japan doctor did not talked with you.
About c, I think that this possibility is not any solution to this problem for a long time. It has to be developed better first.
The intercostal nerve seems to be the best one, if it is possible to use. The reconstruction should be done as soon as it seems to be necessary, so the result is also the best available. I am doing research about the reconstruction methods but not reported them yet.
Best Regards
Tuomo R

<返事の訳>
返事の間隔が空いてしまってごめんなさい。
日本のドクターがあなたと話しをしなかったのは残念ですね。
cについてだけど、私はこの可能性(つまり神経チューブやIPS細胞のこと)が長期で解決に至るとは決して思わないよ。ともかく早くに回復させなければならないのです。
肋間神経は、それが使えるのなら、最善だと思っています。再生は、必要と思われるとすぐに行われるべきであり、その結果もまた最も有効です。
私は再建方法について調査を行なっているところですが、しかしながらそういった報告は未だされていない。
Tuomo R (Tuomoはランタネン先生のファーストネーム)


国内リバーサル手術実現のオンライン署名のこと
国内でフィンランドと同じ術式でのリバーサル手術をして欲しいというオンライン署名を日本胸腔鏡下交感神経遮断研究会代表幹事の塩谷医師宛てで行っていましたが、この研究会の代表幹事ではなくなってしまったため、このオンライン署名は中止とさせていただきます。(※詳しくは日本胸腔鏡下交感神経遮断研究会のサイトを参照。)

塩谷医師に個人的に話をする機会があり、それをきっかけにこの署名を考えたことなので、私からこれ以上他のアクションをすることは考えていないです。ご了承ください。


友人のリバーサル手術がうまく行くことを祈っています。
こちらはフィンランド民謡。

では。
まるとん