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2013年10月30日水曜日

Wikipedia の "ETS手術" (Endoscopic thoracic sympathectomy)の日本語訳を作りました

WikipediaのETS手術の項目なのですが、英語版には Endoscopic thoracic sympathectomy があるのですが、日本語には無いんですね。
Wikipedia の規則上、英語の文章を翻訳したものは、GNU Free Documentation License の範囲で自由に編集して公開することもできるドキュメントになるということなので、私が個人的に訳してみたものを載せておきます。ちなみに 2013.10.30 時点の文章を私なりに噛み砕いて訳したものです。

今の日本の技術は高いのでこの記載とは合わないだろうなぁと思ったところもあったし、また反対に味覚性発汗など興味深いところもあったりとしました。

正式な訳が Wikipedia に載るようならこのページは削除するかもしれないです。


胸部交感神経節切除術(Endoscopic thoracic sympathectomy)

内視鏡下胸部交感神経節切除術(ETS)は交感神経幹の一部を破壊する手術です。ETSは局所多汗症、赤面症、レイノー病および反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)を治療するために行われます。ETSを扱う症状の中で群を抜いて多い症状は手掌多汗症、良く言われる言い回しだと"手汗"として知られているものです。
※"手汗"は英語で"sweaty palms"となっています。都合よく訳すために日本語の言い回しとして私が選んだ言葉です。

交感神経遮断術では、2つある交感神経幹のうちいずれかの、そのどこか関連した神経を物理的に破壊することを行います。交感神経幹とは、脊柱(怪我をしたときその衝撃を和らげるためにある)に沿って両側にある神経節の長い連鎖で、末梢神経系(PNS)のさまざまな側面において重要なものとなっています。各神経幹は、大きく分けて3つの領域に分けられます。頸部(首)、胸部、および腰部です。交感神経節切除術でターゲットにされる最も一般的な領域は、胸部の上側の領域、つまり第1および第5胸椎の間にある交感神経連鎖の部分です。


効能(Indications)

ETS は最も一般的に局所多汗症(具体的な箇所としては、手、足、脇の下)、レイノー症状、赤面症を治療するために行われます。
モヤモヤ病患者の脳の血行を良くするために、頭痛、気管支が過剰に活動してしまう症状、QT延長症候群、そして他の症状の治療のために、ETS の報告があります。


手術法(Surgical Procedure)

ETSでは、交感神経系の胸の上部の領域で、主要交感神経幹の解体 ~すなわち通常であればたくさんの他の器官、組織、筋肉へ伝わるであろう神経の伝達の、取り返しがつかないほどの破壊~ を引き起こします。交感神経幹は自律神経系の神経の一つであり、この交感神経幹を経由して脳は体の調節をします。絶えず変動する感情の状態、運動レベル、および恒常性を維持するための他の要因、とさまざまな環境の変化においてもその調節は行われます。

これらの神経は、手術で切除する部位になるのですが、赤面症や多汗症などの状態を引き起こしてしまう調節もまた行っているところになります。交感神経切除術を行うことによって、これらの生理的メカニズム(つまり赤面症や多汗症)を果たす機能は、無効化されたりあるいは著しく損なわれたりします。

最適な手術方法、神経を切除する適切な箇所、そして結果として生じる主効果と副作用の性質と程度といったことについてはETSの外科医の間でもたくさんの論争があります。通常は内視鏡で行わるのですが、その時外科医は複数の切開部を作って肋骨の間にストロー状の管を通し、それを胸腔に入れます。これにより、外科医が一つの穴にビデオカメラ(内視鏡)を入れ、別の穴から外科用器具を入れることを可能にしています。手術は主要な交感神経連鎖の神経組織を切除することによって行われます。

別の手法にクランプを使う方法というのもあります。神経組織の周辺にチタン製のクランプを使用するもので 'endoscopic sympathetic blockade'(ESB) とも呼ばれて開発されました。そしてこの手法は手術を可逆にすることができない古い手法の代わりのものでした。しかしクランプ手法を取り除くことによるリバーサルはクランプをした後短い時間で行われなければなりません。数日とか、せいぜい数週間と推定されています。そして回復は証拠が示す限り完全ではありません。


物理的、精神的、感情的な影響(Physical, Mental and Emotional Effects)

交感神経切除は、外科的介入を通じて、指定された問題を取り除くあるいは緩和することを期待して、自律神経系の一部を無効化する、(あるいはそれによって脳からの信号を断絶する)ことによって、作用します。多くの非 ETS の医師はこの手法に対する疑問を見つけました。主な理由としてはその目的が解剖学的に見たら典型的な、しかし機能的には無秩序な、神経を破壊するということだからです。

ETS の正確な結果は予測することができません。それは一人一人の神経を解剖学的に見た場合の機能は大きく異なっているということ、そしてまた手術の技術においても様々であるといったことがあるからです。自律神経系は解剖学的に正確なものとなっておらず、そして、体のさまざまな部分とがつながっているかもしれないのです。手の汗のために交感神経切除を受けた多数の患者が足の汗が減ったりあるいは止まったりとした一方で、逆にそうではないといった人もいます。そのような事実によってこの理論は証明されています。SNS(交感神経系)連鎖の反対側にある腰部の交感神経切除以外には、本来足の汗のための信頼できる手術は存在しないのです。

胸部交感神経切除術は、汗、血管の反応、心拍数、心拍の量、甲状腺機能、圧反射、肺活量、瞳孔の開き、皮膚の温度、鳥肌、そして他の自律神経系のふるまい(たとえば闘争-逃走反応)を含むたくさんの体の機能を変化することがあります。感情が高ぶった時に引き起こされる生理学的な反応を減らし、そして、運動するときの体の物理的な反応を減少させることさえもあります。

この手術を精神病患者に施した大がかりな研究では、恐怖(fear)、警戒心(alertness)、覚醒(arousal)において有意な減少を示しました。(Teleranta, Pohjavaaraなど 2003, 2004)。意識(consciousness)は注意、情報伝達、記憶、そして感情を調整したりするものなのですが、覚醒(Arousal)はこの意識(consciousness)に不可欠なものです。

神経疾患や脳卒中における米国国立研究所(U.S National Institute of Neurological Disorders and Stroke)の上級研究員 David Goldstein, M.D. Ph.D. によって推進されている自律神経障害プロトコルを使って、ETS 患者の研究は進められています。彼は体温調節機能の損失、心臓神経の除去、および血管収縮機能の損失を記録しました。神経の再生や神経の発芽によって引き起こされる術前の症状の再発は手術後一年以内に起きることがあります。神経の発芽であるとか、あるいは神経の損傷や怪我のあとの異常な神経の成長であるとかが、さらなる他の損害を引き起こすこともありえます。発芽した交感神経は感覚神経と接続し、交感神経幹によって媒介されて痛みの症状につながることがあります。神経系が活発になるたびに、痛みに変換されます。この発芽とその活動はフライ症候群(Frey's syndrome)につながることがあります。フライ症候群は交感神経切除の効果の後起きうるものと認識されていて、成長している交感神経が唾液腺に神経を分布させる時、嗅覚や味覚の刺激を通じて温度とは無関係の過度の汗につながります。


リスク(Risks)

リスクのない手術はありません。そして ETS には、出血や感染症といった手術における一般的なリスクと、神経機能の永続的な、避けることのできない変化を含むいくつか特別なリスクの、2つのリスクを持っています。多数の患者、主に若い女性ですが、は、この手術の間に亡くなりました。術中および術後の出血は患者の 5% に及んでいるかもしれません。肺が壊れる気胸(Pneumothorax)は患者の 2% に起きるかもしれません。

代償性発汗(あるいは反射性発汗ともいう)は長期に渡って一般的なものとなっていて、手術を受けたことに後悔する患者の割合を引き上げています。重度の代償性発汗となる割合は、研究によっても広くさまざまで、患者全体の 1.2% といった低いものから 30.9% といった高い範囲に至るものまであります。副作用を引き起こした患者のうちの、約 1/4 の人は、重大で障害だと言いました。

胸部交感神経説切除の、まれなありうる結果としては、corposcindosis(体が分割されたと感じる症状:split-body syndrome)です。この症状では、患者は2つの別々の体で生きていると感じます。何故なら、交感神経の機能が、1つは死んだ状態を自覚し、他方が過活動な状態と、2つの違った領域に分けられてしまったという理由です。

さらに、次の副作用が、すべて患者によって報告されています。
慢性的な筋肉の痛み、手足のしびれや脱力感、ホルネル症候群、無汗、異常な高温(無汗と交感神経システムの体温調節機能不全により悪化)、神経痛、感覚異常、疲労や無気力症候群(amotivationality)、呼吸困難、体の内的なまたは環境的な経験に対しての生理的/化学的反応の著しい減少(例:喜びや痛み/知覚刺激)、体性感覚の機能不全、ストレスや運動の異常な生理反応など、寒い気候によって引き起こされるレイノー病(皮肉なことにこの症状のために手術をすることもあります)、反射性発汗(あるいは上記のように代償性発汗)、変化した/不安定な血圧や血液の循環、闘争-逃走反応の欠陥、アドレナリンの欠如、乾燥しきった肌に起因する湿疹やその他皮膚の状態、鼻炎、味覚性発汗(あるいはフライ症候群、上記参照)。

長期的にも起きる副作用は次のようなことがあります。
・長期に交感神経が除かれることに誘発されて、大脳の動脈壁で微細構造が変化してしまう。
・交感神経が精神電流反射を除外してしまう。
・頸部の交感神経の影響により、大脳皮質の小さな静脈内で、酸素飽和の多様性を減少させてしまう。
・交感神経が除かれることは、メンケベルク硬化症の原因の一つとなっています。
・T2-3 の交感神経切除は、手掌多汗症患者の心拍圧反射のコントロールを抑制してしまった。また、心臓血管を安定して維持するための圧反射の反応は、ETS を受けた患者では抑制されているということも私たちは書き留めるべきです。
・熱中症
・交感神経遮断に次いで、心筋の形態的機能変化が起きる。

他の副作用には運動中に十分に心拍数を上げることができないことで、手術の結果として報告された除脈が発達し、その後人工のペースメーカーを必要としてしまったという事例もあります。

ヘルスケア・テクノロジー・アセスメント(Health Care Technology Assessment)のフィンランド事務局は、最近 400 ページに及ぶ系統的なレビューで、"ETS は、即時においても長期的においても、著しい副作用の異常にも高い数値と関連している。" と結論付けました。

スウェーデンの健康と福祉の国家委員会(Swedish National Board of Health and Welfare)の発言を引用します。"その手法は、あるケースにおいては時間が経ってから初めて明らかになるだろうが、永続的な副作用を与えてしまい得るものです。副作用の一つは、あなたの体の他の場所で発汗の増加をまねくかもしれません。なぜ、どうしてこのことが起こるのかは未だにわかっていません。有効な研究結果によれば、すべての患者のうちの約25%-75%は、胴体や足の付け根の部分といった体の他の場所で、多かれ少なかれ深刻な発汗が待っています。これは代償性発汗です。"


議論(Controversy)

2003年には、その手術の発祥でもあるスウェーデンで、障害を負った患者たちの圧倒的な苦情によって ETS は禁止されました。2004年には、台湾の保健当局が20才以下の患者でその手術を行うことを禁止しました。他の国においては、悪名高くも規制のない手術となっています。

現在インターネットでは、ETS の利点を称賛する外科医によって運営されたたくさんの web サイトを見ることができます。しかしながら、ETS 被害者によって運営するたくさんの web サイトもあり、そこでは仕事や日々の活動を行うことができない状態にまでなってしまったひどい副作用のことや適切なインフォームドコンセントに欠けているという認識について苦痛を訴えています。ETS 手術のことに専念しているオンラインのディスカッションフォーラムもいくつかあって、そこでは患者の証言が豊富にあります。


歴史(History)

交感神経切除は 19 世紀の半ばに開発されました。その当時、自律神経システムが体中のほとんどすべての組織、腺そして筋肉に通じているといったことを人々は認識していました。そして外部環境の変化や感情の変化に応じて身体はさまざまな身体機能を調節していて、自律神経はその調節機能において役割を果たしていると推測されました。

最初の交感神経切除は1889年に Alexander によって行われました。胸部交感神経切除は1920年以降手掌多汗症(過剰な汗)のために行われました。当時にも Kotzareff は乳首のラインより上から汗を全くかかない無汗を引き起こすことを指摘しました。

また腰部交感神経切除も開発されました。足に過剰にかく汗であるとか他の病気のためです。しかし、男性の性的機能障害が典型的に引き起こされるものでした。腰部交感神経切除は足の裏の多汗症の治療として、手掌多汗症や赤面症で胸部交感神経切除を行って(極度の代償性発汗という)悪い結果となった患者の治療として、今だに提案されます。広範囲の交感神経切除は低血圧の危険にさらします。

内視鏡交感神経切除(ETS)それ自体は比較的簡単に行うことができるものです。しかしながら、従来の外科的手法によって胸腔内の神経組織にアクセスすることは難しく、痛みを伴うもので、過去にはいくつかの異なるアプローチも生み出されたりもしました。

身体の裏側からのアプローチは1908年に開発されました。その方法では肋骨をのこぎりで切り落とすことを必要としました。鎖骨上部からのアプローチも1935年に開発されました。その手法は身体の裏側から行うよりかは苦痛は少ないものでしたが、今度は繊細な神経や血管に損傷を与え易いものでした。このように困難だったため、そして交感神経切除に伴う障害ともいえる後遺症のため、今でこそ習慣的に広く行われている交感神経切除は一般的なものとは決してなりませんでした。しかしそれでもなお、手掌多汗症、レイノー病、さまざまな精神疾患のために実施は続けていました。1940年代にはロボトミー(lobotomy)手術が一時的に普及したことがあって、交感神経切除(sympathectomy)は精神外科の方法としては関心が薄れることとなりました。

内視鏡で行われる交感神経切除はスウェーデンの Goren Claes と Christer Drott によって1980年代に開拓されました。最小限の侵入で手術を行う内視鏡技術の開発は術後の回復にかける時間を短縮し、その可能性を増加しています。

訳:まるとん

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※いくつかの点については リバーサル手術の後で私が感じている「神経が流れる感触」について⑥ のページで私の考えを述べています。こちらも良かったらみてくださいね。

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